遺贈による名義変更の登記


遺言者が、遺言者の財産を相続人でない人にあげたい(贈与したい)場合に、遺言書には、例えば「下記遺産はAに遺贈する」というように記載します。

Aさんは遺言者の相続人ではないので、「Aに相続させる」とは書けないのです。

仮に「相続する」と書いたとしても、「遺贈する」と解釈されることになります。

このように、遺贈とは、遺言により遺言者の財産(不動産など)を相続人以外の人に贈与することをいいます。そして、遺産が不動産の場合、相続開始後に遺贈を受けた方(受遺者)へ名義変更の登記をします。これが、遺贈による名義変更登記です。

遺贈による不動産の登記が、相続登記と最も異なる違いは、相続登記が相続人による単独申請であるのに対し、遺贈の登記は登記権利者である受遺者と、登記義務者(遺言執行者、または遺言者の相続人全員)の共同申請で行うことです。

このため、遺贈登記は相続登記よりも難易度が高いことが多く、自分で登記することは難しいと言えます。


遺贈による登記の必要書類(遺言執行者がいる場合)

遺言執行者がいる場合は、受遺者(遺産をもらう人)を登記権利者、遺言執行者を登記義務者として、両者の共同で登記申請をします。なお、受遺者自身が遺言執行者を兼務する場合には、登記権利者兼登記義務者亡○○遺言執行者として、事実上受遺者だけで登記申請ができます。

1.登記原因証明情報

遺言書(自筆証書遺言なら検認済のもの)、遺言者が死亡した旨の記載のある戸籍謄本(除籍謄本)、受遺者の戸籍謄本が必要となります。

2.登記済権利証、または登記識別情報通知書

遺言者が不動産の所有権を取得したときの、登記済権利証(または登記識別情報通知書)。

3.遺言執行者の印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)

4.受遺者の住民票

5.固定資産評価証明書

6.代理権限証明情報

遺言執行者が遺言書で指定されている場合は、遺言書と遺言者が死亡した旨の記載のある戸籍謄本等が該当します。一方、家庭裁判所により遺言執行者が選任された場合には、遺言執行者の選任審判書が該当します。尚、遺言者の死亡を証する書面(戸籍謄本など)は、家庭裁判所ですでに確認済ですので添付は不要です。
さらに、司法書士により登記申請を依頼する場合は、受遺者および遺言執行者から司法書士への委任状が該当します。

7.除票もしくは戸籍の附票

遺言者の登記簿上の住所と、戸籍謄本に記載の本籍とを関連づけるために、遺言者の除票(または、戸籍附票)が必要となります。


遺言執行者がいない場合の必要書類

遺言執行者がいない場合は、受遺者を登記権利者、遺言者の相続人全員を登記義務者として、共同で遺贈による所有権移転登記の申請をすることになります。

なお、遺言執行者がいない場合でも、家庭裁判所に遺言執行者の選任をしてもらったうえで、上記の方法で遺言執行者と受遺者の共同申請によって登記をすることも可能です。

1.登記原因証明情報

遺言書(自筆証書遺言の場合は検認済のもの)、遺言者が死亡した旨の記載のある戸籍謄本(除籍謄本)、受遺者の戸籍謄本。ここまでは、上記の遺言執行者がいる場合と共通ですが、さらに、登記義務者全員の戸籍謄本等が必要です。これは、登記義務者が遺言者の相続人であることを示すためです。
2.登記済権利証、または登記識別情報

3.遺言者(遺贈者)の相続人全員の印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)

4.受遺者の住民票

5.固定資産評価証明書

6.代理権限証明情報

司法書士に登記申請を依頼する場合は、受遺者および登記義務者全員から司法書士への委任状

7.除票もしくは戸籍の附票

遺言者の登記簿上の住所と、戸籍謄本に記載の本籍とを関連づけるために、遺言者の除票(または、戸籍附票)が必要となります。


遺贈による名義変更登記は、相続登記と違うことがお分かりいただけたと思います。

特に、遺言執行者がいない場合は、遺言者の相続人全員が登記手続きに関与しなければならず、困難を伴うことが多いと言えます。

なぜなら、遺言者は遺産を相続人でない人に遺贈し、相続人はその遺産を手にすることができないにも関わらず、受遺者の為に登記義務者として実印や印鑑証明書を用意しなければならないのです。

従って、遺言執行者が遺言で指定されていないような場合は、家庭裁判所に遺言執行者の選任のための申し立てを行い、遺言執行者を選任してもらうことが重要といえます。

遺贈による登記以外は、下記からどうぞ