遺言書の文言と申請すべき登記の判断

遺言書を残して、不動産の所有者の方が亡くなった場合、書かれた遺言の内容によって登記手続きが変わってきます。

従って、遺言に書かれた内容というのは、適切に解釈しなければ登記手続きを誤ってしまいます。

 

ここでは、遺言の文言と登記の関連について、ご紹介いたします。

 

 

まず基本的なルールは以下の通りとなります。

 <1>

遺言の文言が「遺贈する」または「遺産を贈与する」となっていた場合は、登記の原因は原則として、「遺贈」です。

 

 <2>

遺言の文言が「相続させる」となっていた場合は、相続財産を受ける人が相続人である限り、登記の原因は、「相続」です。

 

 <3>

例外として、遺言が包括遺贈名義でなされている場合で、相続財産を受ける人全員が、相続人であれば、遺言の文言が「遺贈」でも登記原因は「相続」となります。相続人全員の場合は、相続分の指定ととらえることができるからです。

具体例を見ていきます。

<1>の事例

 「遺言者Aは、一切の財産を妻Bに遺贈する」とある場合、登記原因は、遺贈となります。(妻以外に相続人がいる場合)(S38.11.20)

妻が唯一の相続人の場合は、登記原因は「相続」となります。

 「遺言者Aは、後記の受遺者(相続人の一部)に後記不動産物件を遺贈する」旨の遺言の場合、登記原因は「遺贈」です。

 

相続人全員に対して、各別に「後記物件を遺贈する」旨の記載のある遺言の場合の登記原因は、「遺贈」です。

 法定相続人全員及び相続に出ない者を受遺者とする包括遺贈があった場合、登記原因は「遺贈」です。

<2>の事例

 Aの相続人がCDで「遺言者Aは、その遺産について次の通り相続させる。長男Aにa不動産、次男Bにb不動産とある場合の登記原因は、「相続」です。(S47.4.17第1442)

 Aの相続人がCDで「遺言者Aは、その遺産全部を長男Cに相続させる」とある場合は、登記原因は「相続」です。(S47.4.17第1442)
 特定に不動産を「Cに遺贈する」旨の遺言に「この遺の効力発生時において、Cが遺言者の相続人であるときは、「遺贈する」とあるのは「相続させる」と読み替える旨の記載がある場合にCが相続人であるときは、登記原因は「相続」となります。(登記研究739-163)

<3>の事例

 相続人全員に対して「相続財産の全部を包括遺贈する」旨の遺言がある場合、たとえば「遺言者Aは、その財産のうち3分の2を妻Bに、残りを子供に近東に遺贈する」とある場合、遺言の文言は「遺贈」ですが、例外として「相続」が、登記原因となります。(S38.11.20第3119号)