· 

相続登記の義務化

皆さん、相続登記が義務化されることはご存じでしょうか?

いままでだと、相続登記をするかしないかは、自由でした。

登記申請しなくても、罰則などありませんでした。

これが、義務化されることになったのです。

 

法制審議会の民法・不動産登記法部会は、令和3年2月2日、「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案」を決定し、2月10日に法相に答申しました。

この要綱案の一番の柱は、「相続登記」や「氏名又は名称及び住所の変更登記」の義務化です。

 

 ここでいう所有者不明土地とは、『不動産登記簿等の所有者台帳により、所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地』をいいます。

 ではなぜこのような土地が発生してしまうかといえば、相続登記や所有者の住所や氏名の変更登記が放置されるからです。

 所有者が亡くなっても、次に引き継ぐ人が決まっていない状態が長く続けば、土地の取引流通が停滞してしまいます。

「公共用地として買収ができない」「災害対策工事が進められない」「売買ができない」「活用ができない」という状況が多発するのです。

 

 このような問題を解消するために、民法及び不動産登記法を改正する今回の要綱案が出されたのです。

 

改正案の大きなポイントは以下の4つです。

 

 ✅相続登記の義務化と罰則

 

 ✅氏名又は名称及び住所の変更登記の義務化と罰則

 

 ✅法務局による所有者情報の取得

 

 ✅土地の所有権放棄の制度化

  


それでは、順に見ていきましょう。

 

相続登記の義務化と罰則

   所有者が亡くなって、相続人が不動産取得を知ってから3年以内に登記申請することを義務化します。

守らない人に10万円以下の過料の対象となります。

 では、3年以内に遺産分割協議がまとまらずに相続登記ができない場合は、どうしたらよいでしょうか?

 この場合は、法定相続分による相続登記をするか、自分が相続人であることを期間内に申請(相続人申告登記)すれば過料は免れます。

 相続人申告登記では、申請した者の氏名・住所などが登記簿に記載されることになります。ただし、法定相続分による相続登記や相続人申告登記をした後に分割協議がまとまった場合は、それから3年以内に登記しなければやはり過料の対象となります

  

氏名又は名称及び住所の変更登記の義務化と罰則

 不動産の所有者である個人や法人の氏名又は名称及び住所の変更があった場合は、その日から2年以内の住所や氏名の変更登記申請を義務化します。違反者は5万円以下の過料の対象となります。

 

法務局による所有者情報の取得

 不動産の所有者の氏名又は名称及び住所の変更があった場合に、当事者の申請だけでなく、国も積極的に取り組むことができる仕組みを構築します。 

 法務局(登記官)が、住民基本台帳ネットワークシステム又は商業・法人登記システムを利用して、不動産の所有者の氏名又は名称及び住所の変更情報を取得し、職権で変更登記をすることができるようになります

 

土地の所有権放棄の制度化

 相続によって土地を取得したが、管理が面倒だとか、税金などの維持費がかかって煩わしい場合に、より簡便に当該土地を国庫へ帰属させることが可能となる制度を新設します。

 土地なら全てということではなく、「建物がない」「抵当権等が付いていない」「土壌汚染がない」「境界について争いがない」「管理又は処分にあたって過分の費用又は労力を要する土地でない」等の条件を全て満たす必要があります。

 しかし、簡便になったとはいえ、申請時の手数料と、国が10年間管理するのに必要となる費用を申請者が納付しなければなりません。