相続は発生したが、相続人が不存在の場合、どのような手続きが用意されているのでしょうか?
まず、ここで言う「相続人不存在」の意味ですが、相続人のあることが明らかでない状態を言い、相続時において相続人の有無が不明のことを言います。
もう少し、具体的に言えば、
●戸籍上、相続人が存在しない場合
●戸籍上、最終順位の相続人全員が存在しない場合
●戸籍上、最終順位の相続人は存在するが、相続資格(例:相続放棄した)がない場合
などが該当します。
ややこしいですが、相続人の生死不明又は行方不明等は別の制度(不在者財産管理・失踪宣告制度)で取り扱われ、該当しませんのでご注意ください。
相続人が存在するかどうかわからない状態になった(相続人不存在の)場合に相続人の捜索が行われます。
捜索といっても警察が行うようなものではなく、裁判所の管理下に行われる法律的な手続きです。
以下に示すのがその手続きです。
被相続人の死亡 |
①相続人不存在による相続財産法人(民951条) |
家庭裁判所が相続財産管理人の選任公告(民952条) 管理人の選任の公告をして、相続人の出現を待ちます(2か月) |
相続財産管理人による債権届出の公告(民957条1項) 相続人が出現しなかった場合、債権者の債権届け出を促します(2か月以上) |
家庭裁判所による権利主張の催告の公告(民958条) (公告期間:6か月以上 この間も相続人捜索中) |
相続人であると主張する者がいない場合 |
特別縁故者分与の申立(民958条の3) |
分与の審判確定 |
分与申立がない、若しくは 分与申立却下 |
特別縁故者へ帰属 |
他の共有者へ帰属 |
国庫へ帰属 |
①相続人不存在の場合、相続財産管理人が選任されますが、この管理人は誰の管理人であるかを法律的にはっきりさせるために、相続財産を法人化します。(亡くなった方を代理することはできません)
②家庭裁判所の手続きによって、相続財産管理人が選任されたことが公告されます。公告後2か月間は、相続人が現れるのを待ちます。
③公告期間内に相続人が現れない場合は、管理人は債権者や受遺者に対して2か月以上の期間を定めて債権の申し出をすることを促す公告をします。
④債権申出の公告期間経過後、まだ相続人のあることが明らかでなければ、家庭裁判所は6か月以上の期間を定めて、権利主張催告の公告をします。これは、最後の相続人捜索となります。
⑤④の期間内に相続人が現れない場合、相続人不存在が確定し、相続人の権利が消滅します。
⑥相続人不存在の確定後、3か月間は特別縁故者による相続財産分与の申し立てが認められます。
⑦相続財産は特別縁故者、他の共有者、国庫のいずれかに帰属することになります。 |
上記の捜索を経て、相続人が現れた場合は、いままでみてきました遺産分割協議等の相続手続きを行い、最終的には相続登記を行うことになります。
一方、相続人不存在が確定した場合は、
●特別縁故者への財産分与 または
●他の共有者への帰属 または
●国庫への帰属
となります。
次回は、特別縁故者への財産分与を見ていきます。